本書はゲノム編集を礼賛する本でも批判する本でもない。従来の遺伝子組み換え技術と比べたメリットを説明する一方で、方法はともかくとして「遺伝子を組み替える」ことに関する根源的な危険性をしっかりと訴え、ゲノム編集技術に安易に飛び付くことに警鐘を鳴らしているという意味では非常にバランスの取れた冷静な内容だと言える。
従来の遺伝子組み換え技術には、
1.狙った場所に遺伝子が組み込める確率が極めて低く、偶然に頼るために組み込みに成功するまでに多大な時間と費用を要する
2.遺伝子を組み込む過程で、バクテリア由来の遺伝子を利用したり、あるいはその運び屋としてウイルスを利用しており、そのことが様々な危険性を孕んでいる
といった問題がある。
この本にはないが、遺伝子組み換え後に、うまく組み込まれた細胞を抽出するために組み込まれる抗生物質耐性遺伝子が引き起こす深刻な問題もある。
これらの問題をゲノム編集では避けることができる。
その意味では確かに画期的なのだが、そういった「テクニック」ではないところに関する根本的な問題が遺伝子を組み替える行為には付きまとう。すなわち、我々人類は遺伝子の仕組みを実はほとんど分かっていない、ということだ。
以下は別の本に書かれていたことをまとめたものだ。
【遺伝子組み換えの問題点】
1.「遺伝子が全てを決める」という遺伝子決定論のパラダイムが間違っている。
①遺伝子が狙い通りに変えられたとしても、その性質が発現されるかどうかは分からない。遺伝子の発現は、環境や生理学的状態、細胞の状態などに応じて調整されている。
②遺伝子は、RNAやタンパク質の構造を規定したりしているだけで、これと形質を直に結びつけることはできない。
③タンパク質を合成するのに必要な情報を規定する遺伝子は、ゲノム全体に分散していて、それ以外の全ての遺伝子と不可分に絡み合っている。
2.「人間の狙い通りに遺伝子を構成することができない」
①開発の段階で遺伝子をきちんと導入できたように見えても、それが安定して子孫に伝わるとは限らない。どんな生物にも、種としての同一性を維持するために、割り込んできた外来遺伝子を不活性化する自然の防御機構がある。
②遺伝子は環境の変化に応じて「適応的」突然変異を起こしている。
③新たな遺伝子を挿入すれば、変えるつもりでなかった性質も変わってしまう可能性がある。
これらは、どのような方法で遺伝子を組み替えても排除できない根源的な問題である。
ゲノム編集は遺伝子組み換えの成功確率、正確性を飛躍的に高めた画期的技術ではあるが、生命の何たるかを知らない「ズブの素人」である人間の、神に対する無謀な挑戦であることに変わりはない。
ゲノム編集の技術が進歩したからといって遺伝子組み換え食品を安易に市場に流通させることは危険極まりなく、これまで同様の「疑わしきは罰する」姿勢で望むべきなのである。
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ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書) 新書 – 2016/8/18
小林 雅一
(著)
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購入オプションとあわせ買い
いま、全世界の科学者や医学者たちが、必死に研究開発に取り組んでいる超先端技術がある。「ゲノム編集」だ。この技術に注目しているのは、製薬・化学メーカーだけではない。グーグルやアマゾンまでもがそのビジネス・ポテンシャルに魅かれ、巨額の投資を始めている。この史上空前の技術、そしてそれが私たちの人生や暮らしに与えるインパクトなどをわかりやすく解説するとともに、科学者に群がる巨大企業の実態にも迫った必読書!
いま、グーグルやアマゾンといった世界的なハイテクIT企業が、
その巨大なビジネス・ポテンシャルに魅かれ、
巨額の投資をしている超先端技術をご存じだろうか。
「ゲノム編集」である。
この史上空前の技術、そしてそれが私たちの人生や暮らし、
さらには社会に与えるインパクトなどをわかりやすく解説するとともに、
熾烈な特許争いの舞台裏や
科学者に群がる巨大企業の実態にも迫った、必読書!
----------
みなさんは、これまでに「自分を変えたい」と思ったことがあるだろうか?
たとえば自分の顔、身長、体型、性格、知能、
運動能力、さらにはアレルギーなどの各種体質……
これらすべてに満足している人など、ほとんどいないのではないだろうか?
にわかには信じられないかもしれないが、
(少なくとも技術的には)それが可能になる時代が迫っている。
なぜなら、先に列挙した特質のすべてに遺伝子が強く関与しており、
これを操作する遺伝子工学や生命科学の分野でいま、過去に例を見ない
驚異的な技術革新が起こっていて、それこそがこの「ゲノム編集」だからだ。
世界中の科学者たちは、この技術によって、
すでに「肉量を大幅に増やした家畜や魚」「腐りづらい野菜」などの
開発に成功している。
今後、この「ゲノム編集」は「iPS細胞」などの異なる技術を
組み合わせることで、がんや糖尿病、あるいはアルツハイマー病など、
現代社会に多く見られる病気の治療にも応用されると見られている。
グーグルやアマゾンなどはすでに
「生命科学とITの融合」に取り組み始めている。
さまざまな病院や研究機関などと連携して、ゲノム(DNA)データを
クラウド上に集積、AI(人工知能)でパターン解析することにより、
やがて複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明していくというのだ。
高い知力と強靭な肉体、そして端麗な容姿を兼ね備えた
「デザイナー・ベビー」の誕生を可能とする「ゲノム編集」について、
倫理的な問題をもまじえながら、わかりやすく説いた入門書。
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みなさんは、これまでに「自分を変えたい」と思ったことがあるだろうか?
たとえば自分の顔、身長、体型、性格、知能、
運動能力、さらにはアレルギーなどの各種体質……
これらすべてに満足している人など、ほとんどいないのではないだろうか?
にわかには信じられないかもしれないが、
(少なくとも技術的には)それが可能になる時代が迫っている。
なぜなら、先に列挙した特質のすべてに遺伝子が強く関与しており、
これを操作する遺伝子工学や生命科学の分野でいま、過去に例を見ない
驚異的な技術革新が起こっていて、それこそがこの「ゲノム編集」だからだ。
世界中の科学者たちは、この技術によって、
すでに「肉量を大幅に増やした家畜や魚」「腐りづらい野菜」などの
開発に成功している。
今後、この「ゲノム編集」は「iPS細胞」などの異なる技術を
組み合わせることで、がんや糖尿病、あるいはアルツハイマー病など、
現代社会に多く見られる病気の治療にも応用されると見られている。
グーグルやアマゾンなどはすでに
「生命科学とITの融合」に取り組み始めている。
さまざまな病院や研究機関などと連携して、ゲノム(DNA)データを
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やがて複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明していくというのだ。
高い知力と強靭な肉体、そして端麗な容姿を兼ね備えた
「デザイナー・ベビー」の誕生を可能とする「ゲノム編集」について、
倫理的な問題をもまじえながら、わかりやすく説いた入門書。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2016/8/18
- 寸法10.6 x 1.2 x 17.4 cm
- ISBN-104062883848
- ISBN-13978-4062883849
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商品の説明
著者について
小林 雅一
小林 雅一(こばやし・まさかず)
1963年、群馬県生まれ。KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書、2015年)、『クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書、2013年)など多数。
小林 雅一(こばやし・まさかず)
1963年、群馬県生まれ。KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書、2015年)、『クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書、2013年)など多数。
著者について
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1963年、群馬県生まれ。
作家・ジャーナリスト、KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。
東京大学理学部物理学科卒業。同大学院理学系研究科・修士課程を修了後、東芝、日経BPなどを経てボストン大学に留学、マスコミュニケーションの修士号を取得。ニューヨークで新聞社勤務、帰国後、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。写真@IFIT
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年11月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年10月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ゲノム編集」とは何か。今までの「遺伝子組み換え」と何が違うのか。というレベルだったので、参考になった。
今までの「遺伝子組み換え」は精度に大きな問題を抱えており、1個の遺伝子を組み換えるのに、科学者が1万回あるいは100万回もの実験を繰り返してようやく1回だけ狙ったとおりに組み換えることができるというような技術であった。
だが、この本で語られている「ゲノム編集」は科学者が狙った遺伝子やDNAを構成する「G」「C」「A」「T」からなる無限に近い文字列を一文字一文字、ピンポイントで削除したり、書き換えることができる。
したがって、実験回数が劇的に減少するので、コストが大幅に下がる。
中でも「クリスパー」と呼ばれる最新鋭のゲノム編集技術は、専門家が「高校生でも数週間で使えるようになる」と太鼓判を押すほど扱いやすい技術だという。
この技術が最近話題になっている理由も理解できた。
ただし、ここまで精度が上がってくると実用化に於ける倫理観の問題も出てくる。
すなわち、画期的な技術のため、現状の枠組みでは想定していなかったことが起こるからだ。
それは例えば、自分の赤ん坊をゲノム編集によって秀才にすることができるというような問題だ。
ほとんどSFの世界であるが、そういう時代が近づいてきているということ。
この分野は現代に行ける者としてウォッチしていく必要があるなと感じた。
ゲノム編集とは何かに興味がある方におすすめ。
今までの「遺伝子組み換え」は精度に大きな問題を抱えており、1個の遺伝子を組み換えるのに、科学者が1万回あるいは100万回もの実験を繰り返してようやく1回だけ狙ったとおりに組み換えることができるというような技術であった。
だが、この本で語られている「ゲノム編集」は科学者が狙った遺伝子やDNAを構成する「G」「C」「A」「T」からなる無限に近い文字列を一文字一文字、ピンポイントで削除したり、書き換えることができる。
したがって、実験回数が劇的に減少するので、コストが大幅に下がる。
中でも「クリスパー」と呼ばれる最新鋭のゲノム編集技術は、専門家が「高校生でも数週間で使えるようになる」と太鼓判を押すほど扱いやすい技術だという。
この技術が最近話題になっている理由も理解できた。
ただし、ここまで精度が上がってくると実用化に於ける倫理観の問題も出てくる。
すなわち、画期的な技術のため、現状の枠組みでは想定していなかったことが起こるからだ。
それは例えば、自分の赤ん坊をゲノム編集によって秀才にすることができるというような問題だ。
ほとんどSFの世界であるが、そういう時代が近づいてきているということ。
この分野は現代に行ける者としてウォッチしていく必要があるなと感じた。
ゲノム編集とは何かに興味がある方におすすめ。
2018年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
文章が引き締まっていて、各章、各項の論旨も明快である。
著者の思考の流れに違和感がなく、自然と読むスピードが上がった。
構成に工夫が見られ、ゲノム編集の物語としても楽しむことができる。
時々、エピソードや尾ひれが長かったり、飛躍した比喩が多かったりと、世間の評価とは違った読みにく本(科学の啓蒙書)に出会うことがある。相性や好みの問題かもしれないが。
一気に読みたいと思っている私には、分量もちょうど良かった。
第1章で、クリスパーの衝撃を概観し、
第2章で、DNAの複製メカニズムを復習し、
第3章で、クリスパーの核心に迫る。
そして第4章で、ゲノム編集の現状と展望を倫理の問題を含めて、第1章を発展させた形でまとめる。
一番ワクワクしたのが第3章である。
第1章の書き出しで提示された日本人発見による大腸菌DNA内の奇妙な塩基配列の謎がとける。
「クリスパー」の英語表記と日本語訳の説明があり、すっきりした。
著者は、日本語訳では何のことかわからないだろうとしているが、回文の意味がわかっているので、日本語訳で確認できたことは、理解の定着に役立った。
英単語のpalindrome(回文)を覚えた。
語源的には、ギリシヤ語で「走り戻ってくる」の意味だそうだ。
第2章、最後の「エピジェネティクス」の項も興味深かった。
読めばわかるが、馴染みのないカタカナ語は、英語表記と日本語訳があると有難い。
私のような門外漢でも、このような生命科学の知識を短時間で得ることができるのは、母語で読めるからである。
日本の科学ジャーナリズムと日本語に感謝する。
本書を手にしている中高生もいることだろう。
いつかまた、I can't speak English . でもノーベル賞という、世界を驚かせる人物が現われてほしい。
著者の思考の流れに違和感がなく、自然と読むスピードが上がった。
構成に工夫が見られ、ゲノム編集の物語としても楽しむことができる。
時々、エピソードや尾ひれが長かったり、飛躍した比喩が多かったりと、世間の評価とは違った読みにく本(科学の啓蒙書)に出会うことがある。相性や好みの問題かもしれないが。
一気に読みたいと思っている私には、分量もちょうど良かった。
第1章で、クリスパーの衝撃を概観し、
第2章で、DNAの複製メカニズムを復習し、
第3章で、クリスパーの核心に迫る。
そして第4章で、ゲノム編集の現状と展望を倫理の問題を含めて、第1章を発展させた形でまとめる。
一番ワクワクしたのが第3章である。
第1章の書き出しで提示された日本人発見による大腸菌DNA内の奇妙な塩基配列の謎がとける。
「クリスパー」の英語表記と日本語訳の説明があり、すっきりした。
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英単語のpalindrome(回文)を覚えた。
語源的には、ギリシヤ語で「走り戻ってくる」の意味だそうだ。
第2章、最後の「エピジェネティクス」の項も興味深かった。
読めばわかるが、馴染みのないカタカナ語は、英語表記と日本語訳があると有難い。
私のような門外漢でも、このような生命科学の知識を短時間で得ることができるのは、母語で読めるからである。
日本の科学ジャーナリズムと日本語に感謝する。
本書を手にしている中高生もいることだろう。
いつかまた、I can't speak English . でもノーベル賞という、世界を驚かせる人物が現われてほしい。
2016年12月30日に日本でレビュー済み
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よく纏められていて良書だと思います。
しかし、遺伝子操作の歴史やGWAS、エピジェネティクスなど既知の情報がいささか多く感じられました。
本書に期待したのは第四章のグーグルヤアマゾンといったIT企業が人類の神?になる?といった取り組みの部分なのですが
割とあっさりとしていて、多くの人が持つであろう既存の倫理観で予防線を張らずにもっと突っ込んで頂けたらと思いました。
特に四章最後の部分は、最も深遠かつ重要で、本書のクリスパーの話題とは逸脱してしまう分野になるのでしょうね。
取りあえずこの分野の状況を知っておきたいという方にはお薦めの良書になるのではないでしょうか。
しかし、遺伝子操作の歴史やGWAS、エピジェネティクスなど既知の情報がいささか多く感じられました。
本書に期待したのは第四章のグーグルヤアマゾンといったIT企業が人類の神?になる?といった取り組みの部分なのですが
割とあっさりとしていて、多くの人が持つであろう既存の倫理観で予防線を張らずにもっと突っ込んで頂けたらと思いました。
特に四章最後の部分は、最も深遠かつ重要で、本書のクリスパーの話題とは逸脱してしまう分野になるのでしょうね。
取りあえずこの分野の状況を知っておきたいという方にはお薦めの良書になるのではないでしょうか。
2018年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ゲノムに関して全く知識がなかったが、この本はそのような人間にも分かりやすく書かれている。
遺伝子組み換え食品の最王手、米モンサント社は昨年、独バイエルに買収された。7兆とも言われる買収の裏にどんな意図があるのか、その行方が気になっていた。遺伝子組み換えを巡るバイテク産業はどこへ行くのか。
その答えがこの本にあった。
ゲノム編集は、生物の設計図であるDNAをパソコンのカット&ペーストの様に編集する技術。
精度の悪いこれまでの遺伝子組み換え技術とは比べようがない程、異なるという。おまけに低コストで、時間も手間も短縮できるという。
狙った遺伝子をピンポイントで効率的に編集することで、いずれどんな生物でも生み出せてしまう技術(良くも悪くも)。
法整備も規制も未だままならないこの分野は、すでに独り歩きして莫大な利権争いを生み出しているらしい。いずれ確実に悪用する輩が出るのは確実… 時間の問題だと思われる。
ゲノム編集はバクテリアを使わないという点から、無規制状態だという。腐らないトマトやら変色しないキノコやら何でも生み出せるそうだが、遺伝子組み替え表示のように、「ゲノム編集食品です」と表示する義務も、現状、どうやら無さそうだ(この辺をもっと詳しく書いて欲しかった)。
健康被害や生態系への影響の検証なんて置き去りになりそうで、何とも恐い。きっと見切り発車で世の中に氾濫するに違いない。そうなると人類どころか、地球生命体全てに関わる一大事。
GMO企業については222頁辺りから少々だが書かれている。
米サイバス社はカーギルと組み、この技術で薬剤耐性を持つ菜種を開発済。食用油や家畜飼料となるとのこと。
2015年に合併したダウ・デュポン、シンジェンタを買収した中国化工業団、モンサントを買収した独バイエル…など、悪名高い大バイテク企業もゲノム編集に乗り遅れないよう凌ぎを削っているとある。億単位の金を注ぎ込み、食やら医療やら牛耳る作戦だ。
この巨大資本は、そう遠くない未来に、過去にやってきた手法で、特許だのライセンスだの政治家の囲い混みだのをおこない、罪無き人々から搾取をするだろう。合法的に。
日本もTPP調印でこの渦に呑まれ、取り返しの付かない所へ行き着くに違いない。ゲノム狂乱時代、ゲノム戦国時代だ。恐ろしくて夜も眠れない。
遺伝子組み換え食品の最王手、米モンサント社は昨年、独バイエルに買収された。7兆とも言われる買収の裏にどんな意図があるのか、その行方が気になっていた。遺伝子組み換えを巡るバイテク産業はどこへ行くのか。
その答えがこの本にあった。
ゲノム編集は、生物の設計図であるDNAをパソコンのカット&ペーストの様に編集する技術。
精度の悪いこれまでの遺伝子組み換え技術とは比べようがない程、異なるという。おまけに低コストで、時間も手間も短縮できるという。
狙った遺伝子をピンポイントで効率的に編集することで、いずれどんな生物でも生み出せてしまう技術(良くも悪くも)。
法整備も規制も未だままならないこの分野は、すでに独り歩きして莫大な利権争いを生み出しているらしい。いずれ確実に悪用する輩が出るのは確実… 時間の問題だと思われる。
ゲノム編集はバクテリアを使わないという点から、無規制状態だという。腐らないトマトやら変色しないキノコやら何でも生み出せるそうだが、遺伝子組み替え表示のように、「ゲノム編集食品です」と表示する義務も、現状、どうやら無さそうだ(この辺をもっと詳しく書いて欲しかった)。
健康被害や生態系への影響の検証なんて置き去りになりそうで、何とも恐い。きっと見切り発車で世の中に氾濫するに違いない。そうなると人類どころか、地球生命体全てに関わる一大事。
GMO企業については222頁辺りから少々だが書かれている。
米サイバス社はカーギルと組み、この技術で薬剤耐性を持つ菜種を開発済。食用油や家畜飼料となるとのこと。
2015年に合併したダウ・デュポン、シンジェンタを買収した中国化工業団、モンサントを買収した独バイエル…など、悪名高い大バイテク企業もゲノム編集に乗り遅れないよう凌ぎを削っているとある。億単位の金を注ぎ込み、食やら医療やら牛耳る作戦だ。
この巨大資本は、そう遠くない未来に、過去にやってきた手法で、特許だのライセンスだの政治家の囲い混みだのをおこない、罪無き人々から搾取をするだろう。合法的に。
日本もTPP調印でこの渦に呑まれ、取り返しの付かない所へ行き着くに違いない。ゲノム狂乱時代、ゲノム戦国時代だ。恐ろしくて夜も眠れない。
2018年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これからよく読んで勉強します。とんでもない技術が現れたもんです。どう使うのか、ヒトの理性と知性にかかっていると思う。
2016年9月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ゲノム分野は知らない間に恐ろしく進化している
クリスパーの技術で生殖細胞をいじって、好きなようにデザインできる社会はそう遠くなさそう
人間社会にとって、確実にプラスの材料ではある
けれども、人類の絶対的な幸福感は圧倒的に増すかわりに、相対的な差は看過できないほど開くだろう
デザイナーベビーの特権はまずは金持ちや権力者など超上流階級から浸透していくだろう
自分は中流階級の人間なので、このテクノロジーに知らない間に支配されないよう、工夫をほどこす必要があると感じている
クリスパーの技術で生殖細胞をいじって、好きなようにデザインできる社会はそう遠くなさそう
人間社会にとって、確実にプラスの材料ではある
けれども、人類の絶対的な幸福感は圧倒的に増すかわりに、相対的な差は看過できないほど開くだろう
デザイナーベビーの特権はまずは金持ちや権力者など超上流階級から浸透していくだろう
自分は中流階級の人間なので、このテクノロジーに知らない間に支配されないよう、工夫をほどこす必要があると感じている